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落合直文の掛け軸

5月17日の三陸新報に「煙雲館」で開かれた「お香の会」に関する記事が掲載されていました。気仙沼市松崎片浜の煙雲館は、仙台藩御一家筆頭鮎貝家の庭園で落合直文の生家でもあります。


5:17香道

三陸新報5月17日記事の一部イメージ


記事によれば5月14日に開かれたこの会は、香道大枝(おおえ)流の家元、三品(みしな)隆昭さんによるもので、落合直文直筆の書を眺めながら、歌にちなんだ香木の香りを楽しもうという趣向。

三品さんの弟子である気仙沼市出身で仙台市在住の高橋杏子さんの祖母が直文の書の掛け軸を持っていたそうです。そのため、直文の業績を伝える機会になればと企画されたそうです。記事写真の右側にうつる方が高橋さんでしょうか。

私がおどろいたのは、掛け軸とされている直文の書が、以前このブログで紹介した短歌だったことです。つぎの歌。

たらちねの杖にとおもふわがために一もとゆるせ庭の竹むら

床の間にかけられた掛け軸を拡大してみましょう。


拡大


三陸新報の記事では「ひともと」としていましたので、掛け軸の書ではその表記なのでしょう。写真ではよくわかりません。伊藤文隆先生の著書「定本落合直文綜合歌集」では「一もと」としていましたのでここではその表記に。一本のことです。

綜合歌集では、初出内容を基本としています。この歌の場合には「早稲田文学」第3号です。初出と異なる表記とすることもよくあるようです。

この歌は、母親の杖にするために庭の竹の一本を切ることを許してくれといったことだと思うのですが。明治29年(1896年)35歳のときの歌。

以前のブログでは、気仙沼市古町の「車屋」さんの広告にあった直文の3首短冊のうちのひとつとして紹介しました。

4月15日ブログ「落合直文三首解説」

本日のブログを書くにあたって、「綜合歌集」でのこの短歌内容を確認したところ、新たな発見がありました。この歌に続いてつぎの短歌が掲載されていたのです。(綜合歌集p44)

父君のつゑにやきらむ一もとをわれにはゆるせ庭のむら竹

上掲の「たらちねの〜」の歌と同年、明治29年(1896)年の「上毛青年評論」1号 に掲載された歌。

「つゑ」は「つえ=杖」でしょうね。調べてみると、杖にするためには竹を焼くそうなので、父親の竹杖にするために焼かれるであろう一本の竹を抜くことを許してちょうだいといったことなのかなあ。実際のところよくわかりません。〈やき〉が〈焼き〉かどうかも。

私が面白いと思ったのは、「たらにねの」母のための杖だけでなく父のための杖のことも歌にしていること。

落合家の養子となっていますから、ここでの父君は国学者で神職、歌人でもあった落合直亮(なおあき)。母上はWikipediaによれば隺子(鶴子)か。

そのWikipediaの直亮に関する記述を読んでいて驚きました。〈明治27年(1894年)死去、享年67〉とあったのです。

つまり「父君のつゑに」の歌は、父君の死後に発表されたことになります。こ、これは。すでに亡くなっている父君のための杖なのか。

死出の旅路のための杖とか、〈焼きらむ〉ということから棺におさめる杖という想像もわいてきました。しかし、落合直亮は神職でしたからそれはないでしょうけれど。

能や狂言などの連想もはたらいてくるのですが、この辺にしておきましょうね。想像というよりは妄想になってきました。なにか根本的な誤解をしているのかもしれません。たぶんそうでしょう。

直文の気持ちは、むら竹ならぬやぶのなか。というよりも煙雲のなか。

といったようなことで、落合直文の一幅の掛け軸からただよう薫香を味わうことができたのです。ありがとうございました。

(6/24追記)

昨日このブログを見た菊田裕美君(3年1組)から、記事写真の左端にうつっているのは気高同級生の大島〈宮古屋〉熊谷雅裕君ではないかとメールがありました。私は〈たしかに似ているけれど違うのではないか〉と返信。香道と雅裕君が結び付かなかったのです。しかししばらくしたら、雅裕君ご本人から〈今日のブログ、左端に俺が居る〉と連絡がありました。そうだったのか。私も知るご夫妻からお誘いがあったとのこと。雅裕君も夫婦で参加。

考えてみればさほど雅裕君と香の結びつきは不思議なことではありません。雅裕君は、陶磁器の「たち吉」に長く勤めていました。ですから、香炉や香道の世界にも縁があったでしょう。

20数年前のことになりますが、雅裕君から東京・新橋の東京美術倶楽部でおこなわれた内見会に招いたもらったことがあります。ここは古美術をはじめ美術品取引の総本山的な施設ですから、なかなか中に入る機会がありません。そんなことでこれ幸いと訪れたことを思い出しました。

雅裕君は〈全く、きけなかった〉、つまり香り(の違い)を聞くことができなかったといいいます。まあ、しかたないよね。日頃あつかうのは、ガソリンでありプロパンガス。

そんな忙しい日常のなかでの聞香(もんこう)の集い。奥さん、つやさんと共に安らぎのひとときとなったことでしょう。よかったね。
 
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テーマ : 気仙沼
ジャンル : 地域情報

tag : 落合直文煙雲館

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気中20/小田

Author:気中20/小田
このブログは、東日本大震災で被災した気仙沼中学校第20回卒業生(1967年3月卒/71~72歳)たちを支援する首都圏在住者「気中20回生支援会」ブログとして始めました。いまは、気仙沼出身東京在住者による気仙沼情報ブログとして、魚町育ちの小田(気中3年8組)が書いています。

Twitter: @kechu20

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