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岬さんの気仙沼弁

1月19日のNHK Eテレ「Zの選択」は「地元で働く理由」をテーマに、気仙沼の紺野岬さん(21)と鈴木麻莉夏さん(24)を取り上げていました。ご覧になった方も多いことでしょう。2月9日には再放送もありました。

本日は、この番組のなかでの紺野岬さんの言葉を紹介します。その気仙沼弁(気仙沼方言)が強く印象に残ったのです。

◎むがしのうだはいいよなあ

岬さんは、藤あや子さんの「こころ酒」を聞きながら、「むがしのうだはいいよなあ」などと言って車を運転しています。

岬さんは15歳で漁師に。それから5年たちました。同世代の人で、同じような漁師をやる人はいないのかと問われたのでしょう、つぎのように答えます。

〈20代でやってんの俺ぐらいでねえのがな。なして、だって、俺(がひとりで)やるごろなったら、みんないねぐなってっかもしんねべしさ。言ってわるいんけんとも、父ちゃんと同い年くれのひどだぢだの。どうすんのっさ。〉

漁を引き継いでくれる仲間はまだいないといいます。そしてテロップに「#Z世代に言いたいこと」と示されました。


岬さん
NHK放送画面より


岬さんはつぎのように語ります。

〈みんなちゃらっちゃらしてるね。どうすんだい、耳さ穴あげだり、ベロさ穴あげでピアスつげだり、こばがくせえごどばっかりして。なんなんだ今のひとだぢ(笑)。俺も今の人だじだけんと。〉

そして(かかっている歌を聞きながら)〈鳥羽一郎はいいねえ。最高だ。最高だ。ま、鳥羽一郎だな。〉

一方、岬さんの父、幸一さんは番組冒頭でつぎのように語っていました。

〈なんでまだ岬を見つけだのや。見つけんつもいいがら。めんどくせね。まあ、おめだづのあいでなんかしでられねえんだ。〉

NHKさんも、よくもまあ息子を見つけてきて、こうして熱心に取材をしているよね。自分たちは漁をしなければならないので、お前さんたちの相手にはあまりなれないけれど、そこんとこよろしく、という感じでしょうか。

気仙沼市内と思われるスナックの場面もありました。父の幸一さんとも親しいのでしょう、唐桑の第18一丸(かずまる)佐々木夫一(ゆういち)さんが岬さんに言うのです。

〈ぐれでみろ。グレコローマンスタイルになればいい〉と。

岬さんに、あまりいろんなことに気をつかわず、好きにやればいいっちゃといったことだったのではないかと。

岬さんらの言葉は以上です。こうして気仙沼弁での言葉を文字にした文章を他地域の人が読むとどんな感じなのかなあ。

しかし気仙沼の人ならば、地元のイントネーションに脳内変換して読んでいただけるのではないでしょうか。

そもそも、岬さんも幸一さんも佐々木さんも、言葉が気仙沼弁ということはもちろんなのですが、なんというか思考というか話す内容/メッセージそのものが気仙沼弁というか気仙沼的なのではないかと。そこが私のツボにはまったようです。

東北の人が寡黙だとか、その寡黙さに秘められた熱い思いみたいなことが語られたり書かれたりしますが、少なくとも気仙沼の人はちょっと違うよね。

この放送のなかでの岬さんも饒舌(じょうぜつ)ですし、私の知る気仙沼の人もその感情表現が実に豊かです。

私の妻も気仙沼出身です。南町育ちなのですが、会話のなかで〈気仙沼ならこう言うよね〉ということで気仙沼弁を披露してくれます。とてもうまい、というか、気仙沼の言葉でなければ伝わらないニュアンスとかメッセージをそこに感じるのです。これは気仙沼に限らずほかの地方でも同じでしょうが。

(私の両親は新潟生まれ。父は新発田、母は柏崎。そんなことでネイティブではありませんから、私が気仙沼弁っぽく話しても、すぐに修正されるのです)

◎漁師のハンモック

画面にうつる岬さんと幸一さんの船「第57千鳥丸」は気仙沼のどこの船なのだろう。映像のなかにあった「漁師のハンモック」をヒントに調べてみたらすぐにわかりました。

気仙沼市本吉町の大谷(おおや)です。毎日新聞の配信記事によれば、東日本大震災の津波で漁船「第38千鳥丸」、そして自宅や漁具も流され、避難した寺で仲間と漁網を使った「漁師のハンモック」をつくっていたといいます。震災当時、岬さんは小学5年生でした。

毎日新聞2021年11月6日配信記事(有料)

毎日新聞2021年11月6日配信写真(無料)

この毎日新聞の配信記事は有料になりますが、配信写真18画像は無料で見ることができます。小学生のころの岬さんや、成人式を迎えスーツ姿で幸一さんとうつる写真なども。

本日のブログは当初、方言サミット気仙沼大会の内容を踏まえ、気仙沼弁(気仙沼方言)の音声を記録することの難しさや意義について記そうと思っていたのです。しかし、こうして紺野さん親子の東日本大震災経験を知ってちょっと方向を変えました。

もうすぐ東日本大震災から11年。1月19日の「Zの選択」は、震災を経験した紺野岬さんと鈴木麻莉夏さんの〈地元で働く理由〉を深くとらえていたように思います。

NHKさん、ありがとうございました。

1月18日ブログ「地元で働く理由」

 
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テーマ : 気仙沼
ジャンル : 地域情報

tag : Zの選択

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気中20/小田

Author:気中20/小田
このブログは、東日本大震災で被災した気仙沼中学校第20回卒業生(1967年3月卒/71~72歳)たちを支援する首都圏在住者「気中20回生支援会」ブログとして始めました。いまは、気仙沼出身東京在住者による気仙沼情報ブログとして、魚町育ちの小田(気中3年8組)が書いています。

Twitter: @kechu20

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