鶴亀の湯クラウド
気仙沼市が、復興祈念公園に建設するモニュメント「祈りの帆(セイル)」のクラウドファンディングを行っていることはこのブログでも紹介してきました。これに気仙沼中学校20回生支援会、けせもい会としての寄付を行ったことについてはすでに報告したとおりです。残り日数が30日ですが同ファンディングのサイトを見てみると3月29日正午時点で、目標2000万円に対して、1500万円近くまでの実績となっています。
本日紹介するのはもうひとつのクラウドファンディングです。こちらは気仙沼市魚市場前に銭湯を復活させようというもの。ちょっと長くなりますが、今週最後のブログということで、金土日にゆっくりご覧いただければと。

鶴亀の湯 クラウドファンディングサイトより
プロジェクトをスタートさせたのは、昨年12月に(たぶんこの企画のために)設立された一般社団法人 歓迎プロデュースの小野寺紀子さん、斉藤和枝さん。そして根岸えまさんもチームに加わっています。
紀子さんは、漁業用の飼料や資材の販売のほか、アンカーコーヒーの経営などもおこなっている(株)オノデラコーポレーションさんの常務取締役です。和枝さんは〈金のさんま〉をはじめとする水産加工品を提供している(株)斉吉商店さんの専務取締役。気仙沼市内の〈鼎・斉吉〉のほか、日本橋三越にも出店しています。ご両人とも気仙沼の漁業に深い関わりがあり、気仙沼の人にはあらためて紹介する必要もないでしょう。根岸えまさんについてはまたのちほど。
プロジェクト名の上に〈気仙沼の女将たちの挑戦〉とあることから連想が働くと思いますが、このお三方はいずれも気仙沼つばき会のメンバーです。同会は地元ホテルや和装店、水産加工品店などの女将さんらによって、地元気仙沼の観光を女性の目線でPRしていこうと2009年に発足されました。〈出船おくり〉や〈市場で朝めし。〉〈気仙沼漁師カレンダー〉などの活動は皆さんご存じのとおりです。今回の銭湯復活企画は、つばき会としてのプロジェクトではありませんが、その活動目的には重なるところが多いでしょう。
さて、肝心のクラウドファンディングですが、目標金額は600万円です。家入一真(いえいりかずま)さんが代表をつとめ、この分野では国内最大のサービスを提供している(株)CAMPFIRE(キャンプファイア)による社会貢献型クラウドファンディング「GoodMorning」を利用してのプロジェクト。支援は5000円からとなっています。詳細はつぎのふたつのサイトをご覧ください。
クラウドファンディングサイト
「鶴亀の湯」公式サイト
また、これらのサイトとは別に、ニュースサイト「BLOGOS」(ブロゴス)の3月11日配信記事でも、今回の銭湯復活企画が紹介されています。この記事は、3月11日に配信されたネットテレビ「AbemaTV/けやきヒルズ」の映像内容(約17分)を記事化したものです。
「BLOGOS」(ブロゴス)3月11日配信記事
番組映像では、根岸えまさんの活動が紹介されています。えまさんは、震災後の気仙沼でのボランティア活動をきっかけとして4年前に東京から気仙沼市唐桑町に移住しました。番組のはじめでは彼女を含む〈移住女子〉の話、後半ではえまさんが取り組んでいる銭湯復活プロジェクトが紹介されます。クラウドファンディングや公式サイト内容とブロゴスの記事を合わせ読むと、銭湯復活を計画した意図や背景がよくわかります。私なりにまとめてみました。
◎計画の概要
計画されている銭湯の名は〈鶴亀の湯〉。2017年5月に廃業した気仙沼の内湾近くの〈亀の湯〉を思い出させながら、4月7日に開通する気仙沼大島大橋の愛称〈鶴亀大橋〉の名も踏まえている。とてもいい名前です。なお、鶴は本土側の〈鶴ヶ浦〉から、亀は大島の〈亀山〉から。
そして銭湯に加え別館として〈鶴亀食堂〉も設けられ、風呂と食堂とで漁師さんをもてなします。〈鶴亀〉をブランド名としたレトロモダンイメージのロゴマークもすでにできあがり、プロジェクトサイトにも表示されています。
計画されている銭湯や食堂はトレーラーハウス方式です。実用上は一般の建築物と同様ですが、車輪などにより牽引して移動できるようにしてあるため、法的には建築物ではなく車両。固定資産税がかからないなどのメリットを生かすことができますが、水道やガスといった配管設備には工夫が必要です。下水の処理なども同様ですね。私は以前の仕事で知ったのですが、初期には輸入システムが多く、日本国内のパイプ規格との適合などに苦労することもあったようです。現在ではかなり普及していますから、こうした課題も改善されているでしょう。
クラウドファンディングの期間は3月5日から5月23日までとなっています。気仙沼市復興祈念公園モニュメントのファンディング期間が1月28日から4月28日までなので、現時点では市民(民間)と市(行政)のふたつのクラウドファンディングが並立するかたちとなっています。しかし、けっして対立的なものではありません。というのも、今回の銭湯の開業にあたっては、市から1000万円の助成金を受けるのです。
上記の「AbemaTV」紹介記事のなかに、つぎの記述がありました。〈銭湯の開業には資金が3000万円必要。1000万円は市から助成金を受け、1400万円は気仙沼の企業から集める予定だが、残りの600万円はネットを使ったクラウドファンディングで集める〉。この助成金は、気仙沼市の2018年度 創造的産業復興支援事業による補助金です。
話がちょっと横にずれますが、この気仙沼市の創造的産業復興支援事業は、吉川(きっかわ)晃司さんと布袋(ほてい)寅泰さんの音楽ユニット「COMPLEX」からの寄付金7500万円を受けて2012年度に創設されました。同年度に41件の申請から選考された10事業者に対して交付されています。その後の2015、17、そして今回の18年度は別の予算措置がなされていますが、吉川さんと布袋さんの復興支援の意思が今回の銭湯復活企画にもつながっていると言ってもよいでしょう。お二人にあらためてお礼を申し上げます。
2012年6月5日ブログ「布袋さん吉川さん」
また、銭湯復活企画は復興庁クラウドファンディング支援事業の対象プロジェクトになっていますから、国の支援も受けていることになります。こうして市や国の助成や支援を受けることができるのも、小野寺さん、斉藤さん、根岸さんの個人としての信用、そして彼女らが属す気仙沼つばき会やそれぞれの企業・団体の活動が高く評価されているからに違いありません。
◎みしおね横丁
クラウドファンディングの活動報告のなかに、気仙沼魚市場前の建設予定地での地鎮祭が紹介されていました。そのなかに〈鶴亀の湯と鶴亀食堂は、「みしおね横丁」の中で、他5店舗の飲食店さんと一緒に開店します〉と記されています。
この「みしおね横丁」の内容がよくわからなかったのですが、調べてみると気仙沼で働くインドネシア人のためのイスラム教の礼拝所(モスクではなくムショラ)とインドネシア料理店も設けられるとのこと。計画しているのは、インドネシアに現地法人を設立し、同国初となるリサイクルアスファルトのプラントの建設などもしている気仙沼の(株)菅原工業さんです。専務の菅原渉さんが中心となって計画を進めているようです。
上記の「AbemaTV」の映像のなかにも「みしおね横丁」の模型がうつっています。その通路面に〈TO MECCA〉と記されているのは礼拝所設置にあたって、メッカの方向を示すものだったのですね。この横丁計画についてはまたあらためて紹介の機会があるでしょう。
私はこの銭湯復活のクラウドファンディングをはじめて知ったとき、とてもよいプロジェクトであると思いました。というのも、2017年6月6日の三陸新報に〈船員たちに風呂を〉という投稿が掲載されたことをこのブログで紹介し、〈魚市場の浴場計画は検討の価値があるように感じました〉と記したこともあったからです。その話は回をあらためることにいたします。
銭湯復活プロジェクトの説明文のなかにこんな言葉がありました。〈気仙沼を「日本一 漁師さんを大切にする町」にしたい〉。私もふくめ、共感する人が多いのではないでしょうか。
今週はこれにて。というか、「平成」最後のブログ投稿ということで(といったん書きましたが、4月1日は新元号の発表で、改元は1か月先でしたね。失礼しました)(笑)。
本日紹介するのはもうひとつのクラウドファンディングです。こちらは気仙沼市魚市場前に銭湯を復活させようというもの。ちょっと長くなりますが、今週最後のブログということで、金土日にゆっくりご覧いただければと。

鶴亀の湯 クラウドファンディングサイトより
プロジェクトをスタートさせたのは、昨年12月に(たぶんこの企画のために)設立された一般社団法人 歓迎プロデュースの小野寺紀子さん、斉藤和枝さん。そして根岸えまさんもチームに加わっています。
紀子さんは、漁業用の飼料や資材の販売のほか、アンカーコーヒーの経営などもおこなっている(株)オノデラコーポレーションさんの常務取締役です。和枝さんは〈金のさんま〉をはじめとする水産加工品を提供している(株)斉吉商店さんの専務取締役。気仙沼市内の〈鼎・斉吉〉のほか、日本橋三越にも出店しています。ご両人とも気仙沼の漁業に深い関わりがあり、気仙沼の人にはあらためて紹介する必要もないでしょう。根岸えまさんについてはまたのちほど。
プロジェクト名の上に〈気仙沼の女将たちの挑戦〉とあることから連想が働くと思いますが、このお三方はいずれも気仙沼つばき会のメンバーです。同会は地元ホテルや和装店、水産加工品店などの女将さんらによって、地元気仙沼の観光を女性の目線でPRしていこうと2009年に発足されました。〈出船おくり〉や〈市場で朝めし。〉〈気仙沼漁師カレンダー〉などの活動は皆さんご存じのとおりです。今回の銭湯復活企画は、つばき会としてのプロジェクトではありませんが、その活動目的には重なるところが多いでしょう。
さて、肝心のクラウドファンディングですが、目標金額は600万円です。家入一真(いえいりかずま)さんが代表をつとめ、この分野では国内最大のサービスを提供している(株)CAMPFIRE(キャンプファイア)による社会貢献型クラウドファンディング「GoodMorning」を利用してのプロジェクト。支援は5000円からとなっています。詳細はつぎのふたつのサイトをご覧ください。
クラウドファンディングサイト
「鶴亀の湯」公式サイト
また、これらのサイトとは別に、ニュースサイト「BLOGOS」(ブロゴス)の3月11日配信記事でも、今回の銭湯復活企画が紹介されています。この記事は、3月11日に配信されたネットテレビ「AbemaTV/けやきヒルズ」の映像内容(約17分)を記事化したものです。
「BLOGOS」(ブロゴス)3月11日配信記事
番組映像では、根岸えまさんの活動が紹介されています。えまさんは、震災後の気仙沼でのボランティア活動をきっかけとして4年前に東京から気仙沼市唐桑町に移住しました。番組のはじめでは彼女を含む〈移住女子〉の話、後半ではえまさんが取り組んでいる銭湯復活プロジェクトが紹介されます。クラウドファンディングや公式サイト内容とブロゴスの記事を合わせ読むと、銭湯復活を計画した意図や背景がよくわかります。私なりにまとめてみました。
◎計画の概要
計画されている銭湯の名は〈鶴亀の湯〉。2017年5月に廃業した気仙沼の内湾近くの〈亀の湯〉を思い出させながら、4月7日に開通する気仙沼大島大橋の愛称〈鶴亀大橋〉の名も踏まえている。とてもいい名前です。なお、鶴は本土側の〈鶴ヶ浦〉から、亀は大島の〈亀山〉から。
そして銭湯に加え別館として〈鶴亀食堂〉も設けられ、風呂と食堂とで漁師さんをもてなします。〈鶴亀〉をブランド名としたレトロモダンイメージのロゴマークもすでにできあがり、プロジェクトサイトにも表示されています。
計画されている銭湯や食堂はトレーラーハウス方式です。実用上は一般の建築物と同様ですが、車輪などにより牽引して移動できるようにしてあるため、法的には建築物ではなく車両。固定資産税がかからないなどのメリットを生かすことができますが、水道やガスといった配管設備には工夫が必要です。下水の処理なども同様ですね。私は以前の仕事で知ったのですが、初期には輸入システムが多く、日本国内のパイプ規格との適合などに苦労することもあったようです。現在ではかなり普及していますから、こうした課題も改善されているでしょう。
クラウドファンディングの期間は3月5日から5月23日までとなっています。気仙沼市復興祈念公園モニュメントのファンディング期間が1月28日から4月28日までなので、現時点では市民(民間)と市(行政)のふたつのクラウドファンディングが並立するかたちとなっています。しかし、けっして対立的なものではありません。というのも、今回の銭湯の開業にあたっては、市から1000万円の助成金を受けるのです。
上記の「AbemaTV」紹介記事のなかに、つぎの記述がありました。〈銭湯の開業には資金が3000万円必要。1000万円は市から助成金を受け、1400万円は気仙沼の企業から集める予定だが、残りの600万円はネットを使ったクラウドファンディングで集める〉。この助成金は、気仙沼市の2018年度 創造的産業復興支援事業による補助金です。
話がちょっと横にずれますが、この気仙沼市の創造的産業復興支援事業は、吉川(きっかわ)晃司さんと布袋(ほてい)寅泰さんの音楽ユニット「COMPLEX」からの寄付金7500万円を受けて2012年度に創設されました。同年度に41件の申請から選考された10事業者に対して交付されています。その後の2015、17、そして今回の18年度は別の予算措置がなされていますが、吉川さんと布袋さんの復興支援の意思が今回の銭湯復活企画にもつながっていると言ってもよいでしょう。お二人にあらためてお礼を申し上げます。
2012年6月5日ブログ「布袋さん吉川さん」
また、銭湯復活企画は復興庁クラウドファンディング支援事業の対象プロジェクトになっていますから、国の支援も受けていることになります。こうして市や国の助成や支援を受けることができるのも、小野寺さん、斉藤さん、根岸さんの個人としての信用、そして彼女らが属す気仙沼つばき会やそれぞれの企業・団体の活動が高く評価されているからに違いありません。
◎みしおね横丁
クラウドファンディングの活動報告のなかに、気仙沼魚市場前の建設予定地での地鎮祭が紹介されていました。そのなかに〈鶴亀の湯と鶴亀食堂は、「みしおね横丁」の中で、他5店舗の飲食店さんと一緒に開店します〉と記されています。
この「みしおね横丁」の内容がよくわからなかったのですが、調べてみると気仙沼で働くインドネシア人のためのイスラム教の礼拝所(モスクではなくムショラ)とインドネシア料理店も設けられるとのこと。計画しているのは、インドネシアに現地法人を設立し、同国初となるリサイクルアスファルトのプラントの建設などもしている気仙沼の(株)菅原工業さんです。専務の菅原渉さんが中心となって計画を進めているようです。
上記の「AbemaTV」の映像のなかにも「みしおね横丁」の模型がうつっています。その通路面に〈TO MECCA〉と記されているのは礼拝所設置にあたって、メッカの方向を示すものだったのですね。この横丁計画についてはまたあらためて紹介の機会があるでしょう。
私はこの銭湯復活のクラウドファンディングをはじめて知ったとき、とてもよいプロジェクトであると思いました。というのも、2017年6月6日の三陸新報に〈船員たちに風呂を〉という投稿が掲載されたことをこのブログで紹介し、〈魚市場の浴場計画は検討の価値があるように感じました〉と記したこともあったからです。その話は回をあらためることにいたします。
銭湯復活プロジェクトの説明文のなかにこんな言葉がありました。〈気仙沼を「日本一 漁師さんを大切にする町」にしたい〉。私もふくめ、共感する人が多いのではないでしょうか。
今週はこれにて。というか、「平成」最後のブログ投稿ということで(といったん書きましたが、4月1日は新元号の発表で、改元は1か月先でしたね。失礼しました)(笑)。
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