うつヌケと気仙沼

30万部をこえるベストセラーとして話題になっている田中圭一さんの「うつヌケ」という漫画本を読みました。副題は〈うつトンネルを抜けた人たち〉。うつ病になり快復したことがある田中さんが、同じ経験をした人達の話をきいてまとめた〈うつ脱出体験記〉です。このなかに小説家 熊谷達也さんの話が出てくると聞いたのです。

その話のポイントを紹介します。熊谷達也さんは冒頭で、〈ボクが「うつ」だったのか……自信はないんです〉と語ります。大学を出て埼玉の中学校で教職についた熊谷さんは、仕事好きで人一倍はたらいたそうです。ただ、生徒の素行問題などの対応にも追われました。その後、気仙沼中学校に赴任。埼玉とは一転して多くの生徒に慕われ、楽しい日々であると同時に仕事量はさらに増加します。そして、ここで知り合った同僚の女性と結婚。それをきっかけに、のどかな田舎の中学校に異動しますが、翌年の冬休み明けの朝、ふとんから起きられなくなり学校を休みます。〈転勤で気が抜けて30年分の疲れが出たんでしょうね〉。

うつヌケ1

1カ月間休んで、これからどうしようかと悩んだそうですが、奥様が教師をやめちゃえばと提案します。熊谷さんが考えてもみなかった選択肢でした。学校に辞表を出したとき、未来が一気に開かれるような開放感を味わったといいます。

その後、他の仕事をやりつつ、その合間に書いた小説『ウエンカイムの爪』で作家デビュー。2004年には『邂逅の森』で直木賞を受賞します。そして東日本大震災。ここから目をそむけないでしっかりと現実を見つめよう……そんな思いから被災地を舞台にした「仙河海シリーズ」に取りかかります。しかし〈いったい、ボクはなんのために書いている? 誰がこの作品を待っているというんだ〉という思いにもかられるのです。そして最終頁。

うつヌケ2

そうか、誰のためでもない、ここで待っている人のために書いていこう。そう思うと気が楽になったといいます。

『うつヌケ』では、熊谷達也さんがなんのために書いているのかと悩んだのが震災から5年後のこととしています。これは私の聞いた話とは少し違っています。昨年9月のKSB復興フォーラムでのご本人の話では、震災直後からしばらくは、小説はもちろん新聞も読めなかったと。実際の話と漫画本の内容の細部の違いはあるかもしれません。しかし、気仙沼でかつての教え子や友人と接するうちに、気持ちが楽になっていったということを知ると、私も救われるような気がいたしました。

この本には熊谷達也さんや本人も含め、17人の方の体験が紹介されています。ミュージシャンの大槻ケンヂさんや、哲学研究者として著書も多い内田樹(うちだ たつる)さんも登場します。それぞれの話がとても興味深く、この本がベストセラーになっているのもうなづけます。書店にいったときにでものぞいてみてください。131頁からの第17話〈熊谷達也の場合〉です。



2016年9月5日ブログ「熊谷達也先生の話」
4月5日ブログ「白いカンバス」

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ジャンル : 福祉・ボランティア

tag : 気仙沼 気中20 気仙沼中学 熊谷達也 うつヌケ

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気中20回生支援会

Author:気中20回生支援会
東日本大震災で被災した気仙沼中学校第20回卒業生(1967年3月卒/65~66歳)たちを支援する首都圏在住同級生を中心としたグループです。魚町出身東京在住の3年8組小田が書いています。

twitter:@kechu20

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