『鮪立の海』書評

4月8日の気仙沼〈みなとのがっこう〉で熊谷達也さんはどのような話をされたでしょうか。この〈がっこう〉に集った生徒のなかには、熊谷先生の気仙沼中学校時代の教え子もいたことでしょう。そして当日は、熊谷さんのほかに仙台の出版社「荒蝦夷(あらえみし)」の代表である土方正史さんも聞き手として参加したはずです。

翌日4月9日、柏崎のホテルで開いた読売新聞の書評欄を見て驚きました。土方さんが評者となって、熊谷達也さんの最新作『鮪立(しびたち)の海』が紹介されていたのです。

読売書評
読売新聞4月9日記事の一部イメージ

書評の前半では、「鮪立の海」の物語が簡潔に紹介されます。その後に熊谷達也さんと気仙沼の関係や〈仙河海〉シリーズのことが紹介されます。文章を引用します。

〈 著者は1990年代を宮城県気仙沼市で中学教師として過ごした。仙台で作家となって、そして東日本大震災。架空の港町〈仙河海〉は気仙沼そのものといっていい。かつての教え子たちが生活を破壊され、日々呻吟(しんぎん)する中で綴られたこのシリーズ、本作のほか7作が刊行されている。明治以降の近代漁業基地への歩みを追い、戦乱から高度経済成長の昭和を経て、やがて「あの日」を迎える〈仙河海=気仙沼〉。国家と自然に翻弄されて、それでも生活は続く。祖父母から子へ孫へと登場人物たちの血脈も繋がって、シリーズは未来にも及ぶ。

 あの日、津波と火災に蹂躙された三陸の港町に、どんな歴史が、暮らしがあったのか。著者はそれを三陸を知らない読者に物語る。気仙沼の、被災地の読者へ、どんなに過酷であっても日々を繋ぐ希望を伝える。なにより被災地に暮らす著者にとって、このシリーズは自らの再生への道程であったかもしれない。〉

この後、土方さんは、〈「あの日」の物語は、やがて書かれるはずだ〉と続けます。熊谷達也さんは、本作で第1期をおえる〈仙河海〉シリーズ8作で「あの日」つまり3月11日のことを直截(ちょくせつ)には書いていないのです。まだ書けないといったほうがよいのかもしれません。

土方正史さんは、『別冊東北学』の編集に携わったことをきっかけに仙台で出版社「荒蝦夷」を設立し、雑誌『仙台学』『盛岡学』や多くの書籍を刊行してきました。しかし東日本大震災では自宅が全壊するなど大きな被害を受けました。被災者としての原稿依頼に対しては、はじめは断り続けたそうです。書けないと。しかしその後、求めに応じて雑誌などに寄稿した内容が『震災編集者』としてまとめられています。熊谷達也さんが〈仙河海シリーズ〉を書き続けるにあたっては、土方さんのサポートもあったことでしょう。

読売新聞の書評文は、〈本作に続いてシリーズを手に取れば、そこに三陸の海と町と人の叙事詩がある。〉と結ばれています。私は土方さんの文章に、熊谷達也のこの小説群を一人でも多くの人に読んで欲しいという強いメッセージを感じました。

3月30日ブログ「みなとのがっこう」

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tag : 気仙沼 気中20 気仙沼中学 熊谷達也 仙河海 鮪立の海 土方正史

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Author:気中20回生支援会
東日本大震災で被災した気仙沼中学校第20回卒業生(1967年3月卒/65~66歳)たちを支援する首都圏在住同級生を中心としたグループです。魚町出身東京在住の3年8組小田が書いています。

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