作家 小林信彦さんの週刊文春での連載「本音を申せば」は私の大好きなエッセイ。11月17日号「60年代ポップ少年の嘘」と題する一文は特に面白かった。
私たち気中20回生は、1951年4月〜52年3月生まれです。現在は64〜65歳。若い人からたまに、〈ビートルズ世代〉ですねと言われることがありますが、それはちょっと違います。その辺の感じを小林さんがうまく書いていたのです。
週刊文春11月17日号「本音を申せば」の一部イメージ
小林信彦さんと親交のあったハッピーエンド大瀧詠一さん(1948年生まれ)や、作家の亀和田武さん(同1949年)の発言を紹介しながら、「60年代ポップ少年の嘘」について記した部分を以下に引用します。
〈(前略)大瀧さんはよく言っていた。
「ビートルズをリアルタイムで聞いていたという奴は嘘つきです。舟木一夫を聞いていたのがせいぜいですよ」
それは何かというと、ビートルズを持ち出す同世代者への批判だった。
「そうでしょう」
日本テレビで仕事をしていたぼくは、そういう〈世代〉というのがよくわかった。まったく同感といってよかった。
亀和田武さんの「60年代ポップ少年」(小学館)にも同じような台詞がある。
ビートルズの登場によって耳触りのよいアメリカとイギリスのポップは一夜にして“懐メロ”と化した。三十代の半ばになって、「ねえ、カメちゃん。あのころはビートルズをよく聴いたよな。オレたち、やっぱりビートルズ世代なんだよね」
というまったくの歴史の捏造を口にする友人に対して、亀和田さんは「オマエが休み時間に毎日、楽しそうに歌っていたのは、三田明の『美しい十代』と、舟木一夫の『高校三年生』じゃないか」
とひそかに言いかえす。
この記述は亀和田さんがよくくりかえしていた言葉だが、大瀧さんの苦笑とぴったり一致する。(後略)〉(引用は以上)
ここに登場するビートルズの話と同じく、リアルタイムで〈ボブ・ディランをよく聴いていた〉という私たちと同じ世代の人の話はちょっと疑ったほうがよいでしょう。彼のレコードデビューは1962年3月とのことですから私がちょうど10歳のとき。私の感覚でいうと、〈吉田拓郎がボブ・ディランの影響を強く受けたことはよく知っている。要するに真似た〉といった程度。〈風に吹かれて〉もギターを弾きながらよく歌いましたが、ピーター・ポール&マリー(PPM)がカバーしてのヒット曲を歌うという感じではなかったか。
なお、引用文中にある三田明『美しい十代』と、舟木一夫『高校三年生』はいずれも1963年の発売。この2曲はリアルタイムで知り、歌ったおぼえがあります。とすると私たちは、〈ビートルズ世代〉というよりも〈ロッテ歌のアルバム世代〉なのかもしれません。
なお、気仙沼中学3年のときに、吉野信雄君(3年1組)と校内放送でビートルズの「イエスタデイ」を流しました。これについてはつぎの2つのブログにて。吉野君が〈嘘つき〉ということではありません。念のため。
2011年8月1日ブログ「イエスタデイ」
2014年12月22日ブログ「イエスタデイ再び」
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