まずはじめにテレビ番組情報。本日20日(金)22:00-23:00 のBSジャパン「日経プラス10 」で、気仙沼観光タクシーの"ベクシー"が紹介されます。是非ご視聴ください。
ここからが本題です。三陸新報で3月11日から始まったシリーズ「3.11 あの日を語り継ぐ」。その第1回目の語り手は同級生の小山(斎藤)容子さん(3年5組)でした。実家は酒造会社〈角星〉。そして容子さんのご主人は、同じ5組で同級生の魚町〈カネシメイチ〉小山修司君です。
三陸新報2015年3月11日記事の一部イメージ
記事は長文ですが、その一部を引用します。
「 地震のときには自宅にいました。大きな揺れでしたが大津波が来るとは思わなかったので、それほど危機感はありませんでした。お皿が一枚も割れませんでしたから。
小学生の時、チリ地震津波を体験しているので、津波というのは、ヒタヒタと水かさが増してくるというイメージしかありませんでした。今回のように、すごい破壊力を持って水が押し寄せてくるとは想像できず、片付けを優先していました。
主人(カネシメイチ社長)と息子が、「大津波警報が出た」というので、息子には義母とネコを乗せて、舘山(たてやま)にある実家に行くように伝えました。私と主人は家に残りましたが、何をどうしていいのかわからず、時間の経過がまったく記憶にありません。
民生委員をしているので、地域の災害時要援護者や一人暮らしの方、体の不自由な方がすぐ頭に浮かびました。まず海に近いところからと出向きましたが、家が開けっ放しだったので、お隣の方が一緒に避難させてくれたことが分かりました。
自宅に戻り、1月に亡くしたばかりだった義父の、お位牌(いはい)やら何やらを風呂敷にひとまとめにし、蔵の2階なら大丈夫だと思い、棚の上に置きました。
片付けを続けているうちに、海の水が寄せてきたんです。「あっ、水」と思い、一番近い階段を駆け上がりましたが、上がりきらないうちバリバリという音が追いかけて来ました。その音にビックリして、夢中で屋根まで上がり、孤立してしまいました。いつ履いたのか記憶にありませんが、ちゃんと長靴を履いていました。それが、その後の避難に役立ちました。
寄せてくる波で、家がぽこっ、ぽこっと土台から浮き上がるのが見えました。新しい建物で基礎がしっかりしているところは、中はやられても浮きもせず、流れ出しもしませんでしたが、うちのように古い建物は、基礎の土台に家がのっているだけなので浮くんです。私も屋根の上で、自宅が浮いたのが分かりました。「あっ、浮いた」と思いましたが、あの辺は、町中で隣との間が狭かったので、流れ出てしまうことはありませんでした。
海を見ていたいた人たちに、水が引いたことを教えられ、物で埋まった家の中から、たまたま一つ開いていたドアを抜け、隣の菊田さんに助けられた夫と共に、裏の崖を登り、陣山に避難した人と合流。みぞれのような雪が降って、すごく寒くて、とにかく屋根のあるところにと思い、ホテル望洋に行きました。」(中略)
日が暮れた内湾では、火が付いた船がぐるぐる回って、まるで映画のような風景だったと話は続きます。その後、携帯電話の明かりを頼りに太田からトンネルを通って舘山の実家まで歩きます。そして、仮事務所での仕事の再開などについて話しています。カネシメイチが所有する船は無事だったものの、鹿折地区のかさ上げが済んでおらず、冷蔵庫もまだない状態だとのこと。容子さんの話はつぎのように続きます。
「あと5年して、何人の方がここ魚町に戻って来てくださるのか、どれぐらい回復しているのか、街の再生もどうなるのかと、不安はたくさんあります。災害公営住宅ができて何世帯増える、何百人増える見込みだと言われても、昔からいる人たちとの繋がりや、これまでの地域としての、歴史のようなものが消えてしまわないかと、心配でもあり、寂しくもあります。
震災をきっかけとして、先を見越して今までとは違う、まったく新しい考えで、街を作っていけたらいいなあと思います。震災から4年、戻るまであと6年としても10年。人生80年のうちの10年は大きい。だからこの10年を、まちと自分に与えられた再生の機会だと、前向きに考えて暮らしていきたいですね。」引用は以上です。
2011年の5月6日に気仙沼に帰ったときのことを思いだしました。私の実家近くにあったカネシメイチの建物は撤去され、土台を残すのみとなっていました。そこで容子さんは一人片付けをしていたのです。当時のブログにもそのことを書きました。
2011年5月12日「魚町のカネシメイチ」
震災からの10年間を〈街と自分の再生の機会〉と前向きに考えて暮らしたい。容子さんのその気持ちに拍手。そして、63歳を目前にする自分自身もそのように前向きに暮らしていきたいなと思わせる、そんな容子さんの話でした。ありがとう。
テーマ : 東日本大震災支援活動
ジャンル : 福祉・ボランティア
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